画鬼・暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル<前期> 展へ行ってきました。

三菱一号館美術館で開催されている「河鍋暁斎」展に行ってきました。日本画の展覧会ではよくあることなのですが、「前期」と「後期」とで展示変えがあって、今回ぼくが訪れたのは前期のほうです。もちろん後期も行く予定です!

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画鬼暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル|三菱一号館美術館

河鍋暁斎は近年になって、急速に評価が高まっている絵師です。天保2年4月7日〈1831年5月18日〉に生まれて、 明治22年〈1889 年4月26日〉に没していますから、幕末から明治にかけて活躍した画家です。時代的には、日本の江戸後期に位置する絵師ということになりますけど、それまでとは違う独特な感性が絵にはあるのが特徴的です。

たとえば琳派の鈴木其一(寛政8年・1796年 – 安政5年・1858年)なんかに共通するような、「近代意識」の萌芽に近い〝時代が要請するなにか〟が彼にはあったのかもしれない、とぼくは暁斎については常々思っています。彼については、これから無数の研究が行われるのは必須でしょう。

※               ※

今回の展覧会では、暁斎の偉業が大きく三つに分けて紹介されてあります。まず、「暁斎とコンドルとの師弟愛をテーマにしたもの」「『画鬼』」と称された彼の様々なジャンルに及ぶ型破りな作品を紹介するもの」そして「海外へと流出してしまった今回初公開作品となる展示」です。

暁斎の一番弟子は、ジョサイア・コンドル(1852-1920)というイギリス人の建築家でした。彼は日本政府に招かれて、明治における近代建築に大きく貢献した人でしたが、彼は暁斎の絵を観て、弟子入りを志願してしまうんです笑 あの鹿鳴館を作ったのがコンドルです。この展覧会が開催されている三菱一号館を作ったのも彼です。彼の絵も一介ではない「暁英」として、観るべきものがあります。明らかに画家としてのそれです。

それで暁斎です。

まず肉筆画として認められた、彼を世に知らしめた、「枯木寒鴉図」が最初に展示されてあります。この作品については、「『百円』じゃないと売らない」と彼がいった話は有名ですが笑――今のお金に換算すると数百万円くらいですかね――、実際気迫のこもった筆さばきの絵です。動物画や妖怪図、山水図や美人画春画、あらゆる暁斎の絵が、それから展開されていくわけですが――とにかく彼には不可能なジャンルはありませんでした――、暁斎は絵日記なるものもつけていて、これも茶目っ気たっぷりで、実に面白いものです。

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河鍋暁斎 「白鷺に猿図」

その中でぼくがすごく眼を引いたのが「鯉魚遊泳図」(明治18-19年)という絵でしたかね。それとこの「白鷺に猿図」(明治17年)でしょうか。暁斎は自らを狩野派――桃山時代の狩野永徳からはじまる江戸時代を代表する幕府のお抱え絵師――だと自負していたようですが、狩野派に留まらず、あらゆるジャンルの技法を多岐に渡って吸収していったのが、よくわかる作品といえると思います。

江戸の終わりという時代に暁斎が生まれたとき、もうそれ以前に様々な美術の歴史が山積していたわけで、同時に新しい海外からの絵も入っていました。そのことが、画家としての彼にとっては有利に働き、絵師としての形成に関係したのは間違いないでしょう。それを独自の表現方法に昇華させていったのが、河鍋暁斎という天才画家の偉業で、それがどの絵にも充満しています。

彼の絵は日本画特有の動的な大胆さにも拘らず、実に繊細なタッチを用います。墨の濃淡が、強烈です。彼はあまり墨を置かない。とにかくコントラストで描くという手法に、これほどこだわった日本の絵師はいないと、ぼくは思います。さらに構図にも特異さが見られます。それまでの江戸の絵とは決定的に異質であり、彼の作風はたとえ写実であっても、明らかに「絵」なのです。そこに〝心〟があるのです。

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河鍋暁斎 「暁斎楽画 第九号 地獄太夫 がいこつの遊戯ヲゆめに見る図」

たとえば「暁斎楽画 第九号 地獄太夫 がいこつの遊戯ヲゆめに見る図」(明治7年)というこの絵なんか観ていて思ったんですけど。これは単純な「風俗画」に分類されるものですが、こんな絵、普通じゃないです笑。こんな骸骨を描いた画家はかつていなかったでしょう。骸骨が生きています。

ほかに、いいな、と思った絵は――本当にたくさんありましたけれど―-、墨の濃淡が絶妙な筆致を見せた「月の虎図」(明治前半)、「竹虎之図」(明治21年)は、ため息を吐くほど絶品でしたね。そしてなによりぼくが最も暁斎の絵で個人的に気に入っているのが「横たわる美人に猫図」(明治前半)で、これも今回展示されていたので、よかったです。

暖簾と猫の組み合わせは『源氏物語』の女三の宮からモチーフを得ていると思われますが、彼が「類型化」を志向する同時代の浮世絵師とまったく違った姿勢を持っていたことが、よくわかる傑作中の傑作だと思います。

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河鍋暁斎 「横たわる美人に猫図」

本物の日本画を観たい、という人は是非駆けつけるべき展覧会だと思います。彼は奇想でも異端でもなく、正真正銘の日本を代表する傑出した絵師です。これほどの暁斎の絵を一度に見られる展覧会は、初めてのことなんじゃないでしょうか。

それと余談ですけど。日本画の展覧会はとても冷房が効いているので、三菱ではストールの貸し出しがありましたけれど、少し厚手の格好でお出かけするのが得策だと思います!

「後期」のレビューはこちらにあります。

mannequinboy.hatenablog.com

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