絵の音を聴く 根津美術館に行ってきました。

南青山根津美術館で開催されている「コレクション展 絵の音を聴く ―雨と風、鳥のさえずり、人の声―」に行ってきました。同時開催で、「仏教美術の魅力」「古代中国の青銅器」「福島静子のコレクション」「清秋を楽しむ」も同会場で楽しむことができます。根津の常時展示である彫刻品や宝飾時計も観られる内容です。

根津は鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」を毎年展示するので、ぼくの場合夏になると必ず一度は行くのが恒例になっているんですけど笑、今回は「絵を観て、そこから聞こえる音を想像する」というテーマで、其一の作品も交えて、様々な絵や骨董の品々も展示される内容となっており、いつもとは趣向が違っていましたね。

初見のものもけっこうあり、はっきりいって傑作もあったので、行ってよかったです。

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www.nezu-muse.or.jp

「絵の音を聴く」のテーマ展示では、「鳥たちの楽園」「鳴く虫と吠える獣」「妙なる調べ」「名所の賑わい」「音を聴く人々」と名付けられて、それぞれ作品が展示されています。

最初いくつかの古い「花鳥図」が展示されていて、楊月、式部輝忠ら、彼ら皆室町時代の絵師で、中でも、伝狩野元信の「四季花鳥図屏風」(室町・16世紀)など、実際は彼の子松栄の初期作らしい? ですが、四季の花々の中に遊ぶ七十羽もの鷺や雁が描かれたこの作品は、とりわけ素晴らしいものでした。「龍虎図屏風」(室町・16世紀)を描いた雪村周継も室町時代の絵師ですが、ユーモアと大胆な感性で龍と虎を描いていて、みごとでした。周継は後に江戸中期の琳派を代表する尾形光琳にとても影響を与えたようです。

その後は有名な絵師たちによる傑作と呼ぶべき作品が、続々と並びます。

鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」(6曲一双 江戸・19世紀)、久隅守景の「舞楽図屏風」(6曲一双 江戸・17世紀)、岩佐又兵衛の「傘張虚無僧図」(一幅 江戸・17世紀)、狩野山雪の絵もあり、さらに野々村仁清の香合もいくつかありました。個人的には、又兵衛の作品は傑作中の傑作だと思いました。もとは8曲一双で部分的なものなんですが、それでも十分見ごたえのあるものです。

しかし、今回の目玉はなんといっても、池大雅の「洞庭赤壁図巻」(一巻 江戸・明和8、1771年)でしょう。絵巻物で「書」も入ったものなんですが――大雅は書も素晴らしいです――、圧倒的な山水画です。ほかにも修復が完了し、今回が初お披露目となる「近江伊勢名所図屏風」(6曲一双 江戸17-18世紀)もあって、これも見ごたえがありました。

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鈴木其一 「夏秋渓流図」(6曲一双 紙本金地着色 江戸19世紀) (部分)

ぼくは久隅守景も岩佐又兵衛狩野山雪野々村仁清も、それぞれ皆大好きです。でも皆に触れている余裕はないので、今回のコレクション展では、チラシの表絵にもなっている鈴木其一(寛政8年・1796年) – 安政5年・1858年)についてだけ、少し書きたいと思います。

※               ※

鈴木其一は「琳派」のひとりと目される江戸後期の絵師です。俵屋宗達尾形光琳に次いで「三番目の琳派」といわれる酒井抱一の一番弟子です。抱一が描いたとされる絵も、実は其一が抱一の技法を真似て描いたものが意外に多いと、この頃次第に明らかになってきています。其一の絵は今回展示されてある「夏秋渓流図屏風」が象徴的ですけれど――実際にこれは其一の代表作の一品です――、従来日本の絵画は西洋絵画と違って、動的なもの、たとえば四季の移ろい、雨や雪の情景、ときには獰猛な獅子や可憐な小動物らを描いて、そこに「美」を見出すのが普通でしたが、彼はその時点であらゆる絵師とは決定的に異なる性格を持っています。彼の絵には「時間の概念」がないのです。

「夏秋渓流図屏風」は、檜の林の中の渓流を描いたもので、右幅が夏で、左幅が秋の風景が描かれてありますが、夏の檜には蝉が一匹止まっており、秋のほうには紅葉がひらひらと舞い落ちていますが、四季の移ろい加減は感じられません。それだけじゃなく、情緒も皆無です。この展覧会は「音を聴く」というテーマであるにかかわらず、音さえも聞こえてこないんです。

木々に谷川を描き、金に着色する、これはいかにも「琳派」的ですが――師匠の抱一は銀を好みましたけど――、其一の場合、とりわけ葉の描き方など完全にパターン化されており、琳派特有の装飾性の魅力を醸し出しながらも、モダンな絵画を想起させ、抽象画というより、完全にデザインのように見えます。でもこの「表面性」は明らかに琳派のそれであって、彼の研究がさらに深まるのを待ちたいところです。

※               ※

根津美術館はに美しい庭園があります。夏には散策するにはちょっと暑いですけど、茶室があり、四季折々の花々が咲いていて、樹齢の立派な木々もありますし、燈篭もお地蔵さんもいます。エントランスもトイレもとても綺麗です笑 ぼくの都内でのお気に入りの美術館のひとつといってよいです。ここに来ると、心が洗われ、落ち着くんです。開館は午前10時~午後5時まで。会期は7/30(木)~9/6(日)までです。

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