夢つむぐ人 藤平伸の世界 菊池寛実記念 智美術館に行ってきました その1

東京港区にある菊池寛実記念 智美術館で現在開催されている「夢つむぐ人 藤平伸の世界」に行ってきました。(8/8~9/13の第一会期です。)

藤平伸は、日本美術にあまり興味ない方はご存知ないかもしれませんが、現代を代表する陶芸家です。惜しくも、2012年に亡くなられました。今回は2004年以来の回顧展ということで、つまり晩年の作品も展示されるわけで、絶対に見逃すにはいかないわけです。

ぼくは藤平伸の展覧会は、今回初めて訪れました。その数々の名品を目の当たりにすることになって、今言葉を失っています。今年の展覧会ですと、原美術館で開催された「サイ・トゥオンブリー展」以来の衝撃だったといえます。現代陶芸には少々疎くて、図録で見かけたり、名前も知っていましたけれど、彼の実物の作品を今まで観たことがなかったのです。

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www.musee-tomo.or.jp

藤平伸は京都の陶磁器生産の中心地である五条坂の藤平陶器所(現在は藤平陶芸)の次男として生まれました。父である政一氏も陶芸家であり、近代日本を代表する陶芸家河井寛次郎とも強く親交があったゆえ、彼が陶芸の道に進むのは、必然だったのかもしれません。

しかし、その作品は極めて独特であり、素朴で、詩情に溢れ、それまでの「陶芸の既成概念」を覆すものだったといってよいでしょう。数々の賞も受賞されています。

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藤平伸 「月の舞」

藤平伸の陶芸の特徴を、ぼくなりに解説しておきますと、まずその独特な平面構成の造形美があげられます。波打つ線を残す模様が、多くの作品に用いられています。布で押し当てて描くそうです。とにかく質感(マチエール)に相当こだわりがあったというのは特徴的でしょう。そこにあるのは、たぶん河井寛次郎に通じる「民芸」という発想です。

今回、初期の傑作「撃たれる鳥」(1968)が展示されているんですが、これ本当に衝撃的で、滑らかな平面の陶芸作品です。下部が黒く塗りつぶされているため、一見「浮遊」(=「自由」)しているようにも見える不思議な存在感を放っていました。厳密にいって、これが陶芸作品なのか、微妙です。だからといって、なにか奇天烈な前衛的発想や手法で作られたものではなく、彼の作品にはなんともいえない手作り感を失っていません。

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藤平伸「染塵秘帖」より(梟の夜)

この素朴さは、藤平作品のすべてに共通しています。

彼の作品が醸し出す感動は、土の魅力を最大限に引き出すことにおけるイマジネーションの豊かさに尽きます。年を追うごと、少年や鳥や花が、だんだんと彼の作品にはモチーフとして頻繁に登場するようになりますが、「月の舞」という作品など、人を象って独特な模様を施したこの作品は、ほとんど版画のように見えました。

ほかにも、少年が窓から覗いた様を象ったオブジェ「春遠からじ」(1989)も感動的な作品でしたし、青磁器的な色合いの平面にこまごまとした抽象的破片が並べられた「祭礼」(1992)も、とてもよかった。さらに、まさに少年のイマジネーションによる賜物であるような「機関車」や「旗を持つ少年」、梟と月が象られた「梟の家」(1998)など、瑞々しさと郷愁が満ち満ちています。

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藤平伸 「旗を持つ少年」(京都・五条坂、元藤平陶芸工房にて/撮影・大道雪代)

とにかく陶芸の可能性を探り、いろんな作品を作った方です。書も書き、水彩も手掛けました。陶芸、というと、厳しいものを連想する方もいらっしゃるかと思うんですけど、彼の作品にはそういう「高尚さ」は微塵もありません。

藤平さんは「日本の陶芸、京都の焼き物のようなどっしりとした重量感のあるものは好 きではない」と生前述べられていたようです。軽妙な朝鮮の焼き物が好みだったようで、日本陶芸における祖とでもいうべき、江戸時代の京都陶芸の祖、野々村仁清の完璧美が好まないらしく笑、その根底にあるのは、やはり河井寛次郎に通じる「民芸」の意識でしょう。そこには生活の温もりがあり、低いところから世界を見る少年的詩情やロマンがあり、反骨精神が宿っています。藤平伸の作品を解く鍵は、まさしくここにあるのだと思いました。

個人的には、「鳥・花」(2002)という、これは陶板の大型の作品なんですけれど、鳥と花が貼付の技法で象られ、背景が布地を押し当て模様を写して装 飾が配された技法で作られたものなんですが、藤平の骨頂である「釉薬」がまったく使われておらず、最大の持ち味である「抒情性」も希薄で、 「虚無」だけが存在するようなマティエールの作品に、意外な感動があって、驚きました。こんな作品も手掛けているのか、と。

晩年は白い釉を雪に見立てた作品を数多く手がけ、傑作といわれる「太郎の雪」(1998)は、最後の部屋の、いちばん奥に、雪に降り積もられ、寒さに赤ぎれさせた顔と手で、鑑賞者を待っています

※               ※

土曜日に行ったんですが、空いていました。会期も8/8~12/6までと長いです。入館料は一般¥1000で、リピーター割引もあります。智美術館は建物も内装もエレガントで素敵な美術館です。オシャレなレストランも隣接しています。虎ノ門辺りぶらっと散策するついでに、是非鑑賞してみてはいかがでしょうか。絶対にお勧めです。

11月に、再度「藤平伸の世界」を鑑賞しました。その2のレビューはこちらです。

mannequinboy.hatenablog.com

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