春画展 永青文庫 へ行ってきました。

東京都文京区目白台永青文庫で開催されている、「春画展」に行ってきました。なにかと話題のこの展覧会ですが、ぼくが足を運んだのは11/11、会期としては「後期③」にあたる展示期間で、平日の18時頃でしたが、けっこうなお客さんで賑わっていました。

でも、行列で作品が観れない、というほどではなかったです。夜は20時までやっているので、展示期間の終わり頃にさしかからない――最終日近くなると激混みです、控えましょう――、平日に行けば、観覧は大丈夫だと思います。

さて、欧州各地で開催され活況を呈しての凱旋の展覧会だったわけですが、「春画」=ポルノ、ということで会場探しに難儀し、結局、元内閣総理大臣である細川護煕氏の計らいで、永青文庫で今回お披露目となったわけです。2013年に大英博物館で集大成的に開かれたものと決して同一ではありませんが、だいたい同じ内容で展示はされているということです。

永青文庫は旧熊本藩主である細川家に伝わる美術品や歴史資料、また、元総理である細川さんの蒐集品などを収蔵し、展示、研究を行っている公益財団です。いわゆる美術館ではありません。会場も小さいです。場所もかなり微妙なところにあります。敢えて足を運ぶかどうかは、お客さんの意志次第でしょう。

今回は、シンプルに、ぼくの感想を書きたいと思います。

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www.eiseibunko.com

展示は三つに分かれています。「肉筆の名品」と「版画の傑作」と「豆判の世界」です。「プロローグ」と「エピローグ」と題される展示が、最初と最後にもあります。

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「肉筆の名品」から。

春画の始まりは早くて、平安時代からあったとされており、幕府の御用絵師である狩野派や土佐派の絵師たちも春画を描いており、江戸時代になると、一気にそれが庶民にも伝わって、質的にも量的にも爆発的に隆盛します。ここではまだ浮世絵版画として庶民文化が花開く前の時代に、肉筆として描かれていた春画が展示されていました。

ぼくが個人的に素晴らしいと思ったのは、月岡雪鼎の作品です。具体的にいうと、「春宵秘儀図鑑」(明和4~9年・1767~72)、「競艶図」(江戸時代・18世紀)などです。月岡雪鼎は江戸後期に大阪で活躍した浮世絵師で、美人画が得意でしたが、やはり春画も上手い、と感嘆しました。色合い、仕草、表情が、素晴らしく、他の題材と遜色ありません。

あと、驚いたのは、英一蝶の春画があったことであって、狩野山楽が描いたものに、最期に補う形で一蝶が描いた絵巻があったんです。これはとても貴重なものだと思いました。

とにかく絵巻は、作品自体が膨大なもので、鑑賞できるものは、ほんの部分に限られるのが残念なところではあります。当時これらは絵というより、本のように親しまれたものだったのかも、という印象ですね。鳥居清長もとてもよかったですね。

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鳥居清長 袖の巻(部分) 天明5年 (1785) 国際日本文化研究センター

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「版画の傑作」になると、浮世絵が展示されていきます。名のある絵師、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿葛飾北斎ら、名匠が続々現れます。やはり春信、歌麿北斎は図抜けていると感じました。

たとえば北斎は、もともと春画は中国のそれを模倣して十二図一組だったものを、二人の女性主役格を添えて、転落と上昇という題材を用いて、作品に絵と共に細かく文字を書き込んで、長編小説にしあげて「万福和合神」(文政4年・1821年)という春画の傑作を描いていますし。

春信は、浮世之介という色道を究める男が、仙女から妖しい薬を飲んで小男となり、様々な情交を目撃していく、という珍しい筋立ての春画を描いています。これは「風流艶色真似ゑもん」(明和7年・1770年)という作品です。

極めつけは、喜多川歌麿です。「歌まくら」(天明8年1788~1799)は傑作中の傑作です。

美人画で有名な歌麿ですが、春画も独特の鬼才ぶりを放っています。

たとえば下の作品ですが、接吻中の男女共に顔が描いてありません。仕草、表情から、男女の情交をというより、心理が巧みに描かれてあります。あるいは、河童に犯されている題材や、年老いた男に強姦されている題材のものがあったりと、とにかく趣向技巧、作者の想像性が極められています。他にも鳥居清長の「袖の巻」(天明5年・1785)も名品で、すべての一級の絵師たちは、春画にも手を抜くどころか、意欲的に取り組んでいたことがはっきりわかりました。

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喜多川歌麿 歌まくら 天明8年(1788) 浦上満氏蔵

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喜多川歌麿 歌まくら(部分) 天明8年(1788) 浦上満氏蔵

「豆判」というのは、小さな絵の春画作品です。当時の享保の改革により春画が禁制とされたため、公的には存在しないとされる貸本屋が流行り、持ち歩きに便利な小さな冊子形式となって春画が親しまれたということです。これも初公開となるもので、とても珍しいものでしたね。

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春画展覧会は、日本では今回が初めて、だそうです。なので、これだけマスコミでも話題になったのでしょう。

実際ぼくが鑑賞してみて、これをポルノとして扱って邪険にしてしまうのは、一部の歴史資料、芸術を疎外する行為にあたると思い、なんらかの企画でもって、これからも春画展は取り組むべきだと思いました。最後に春信のところで書きますけど、庶民や風景を描いた絵も、春画も、同じ絵だということです。

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「プロローグ」と題される最初では、局部所を露に描いていない、控えめに描かれる、触れ合いの男女の情景が描かれた作品が展示されてあります。これは「永青文庫」の粋な計らいでしょう。「エピローグ」では、その永青文庫が所蔵する春画が展示されてあって、結局今回ぼくはここに飾られていた鈴木春信の「綿摘女」(明和5年・1768年)が、いちばん気に入りました笑

作品をお見せできないのが、残念ですが。

入れ綿や綿帽子を表仕事としながら、実は私婦である女性が男性に乳房を含ませている作品なんですけど、春信の絵の特質として、その独特な曲線や表情の描き方において、男女の見分けが一見つかない、というものがあります。着物や小道具も艶やかで、後ろでは猫がいます。これは男性視線で描かれた作品ではありません。あくまで春信の美意識による「絵」です。

会期は12/23日(水・祝)までです。

ぼくは有楽町線江戸川橋から徒歩で15分かけて行きましたけれど、坂道もあるので、タクシーで行かれてもよいかと思います。場所はホテル椿山荘のすぐ傍です。一度観ておいて、損はない展覧会だと思います。

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