わたしたちの欲求はなにを望んでいるのか part2 ~先人たちの思想

Part1の「人の欲望を解消するには ~人間の五大欲求」の記事において、わたしたち人間がいかに食べ、眠り、排せつするだけで事足りる存在ではない、ということを述べました。わたしたちが、苦しみ、というものを持つのは、わたしたちが社会的存在であり、そこに他人との関係が成立しているからです。

文字通り、他人とはいったいなにを考えているかわからない存在であり、自分と同じ考えを持ち、同じ行動をしているのならば、人は戸惑うことはありません。なにゆえ「社会」なるものができあがったかが、ここから逆説的に見えてくるわけですが、人はそれぞれ違うからこそ、社会規範というルールが必要になってきたわけです。さらに大多数の評決における「民主主義」が、なぜ後年力を持つに至ったのかも、自ずとうなずけてきます。

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人の心の深層心理を解き明かした精神分析学の祖であるフロイト


18世紀の一般市民たちによるフランス革命、イギリスで起こった産業革命以降、人間の歴史は劇的に変化します。農耕を主とした第一産業から、製造業を主とした第二次産業への転換です。

そこで社会の仕組みも大きく変わることになりました。

先にヘーゲルやアダム・スミスらの学説を少しお話しました。彼らは近代社会の人間の在り方を唱えた始祖です。そして19世紀後半に入って、またわたしたちの社会が変化しはじめ、新たな角度から社会の中で生きる人間を観察する人たちが現れてきます。代表として、マルクス、ニーチェ、そしてフロイトがいます。

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ぼくは心理学が好きでしたので、学生の頃に精神分析学の本はたくさん読みました。様々なものを経て、ジークムント・フロイトというオーストリアの心理学者が、その根本に位置する存在だと知ったわけですが、心理学と一言でいっても、フロイトとその弟子であるユングとは学説が違いますし、part1で述べたマズローなども独自の見解を述べています。フロイトがなによりも弁舌をまくしたて、唱えたのは精神分析学というものです。

夢は無意識の行動の現れである、だとか、幼児期の体験は大きく人間の成長に関わっている、とか、多くの人も聞いたことがあるでしょう。

フロイトはいわゆる学者というよりは、町医者であって、実際に多くの患者たちと対面し、話を聞きました。彼らはどこどこが苦しい、どこどこが痛い、というのですが、調べてみても原因がわからない。フロイトは目に見えない領域に、その実態が隠されているのではないか、と考えはじめたのです。

 

わたしたちの苦しみは、わたしたちの内部からではなく、社会との関わりにおいて発生している


わたしたちが持つ、苦しみ、というものについて考えてみましょう。先に、わたしたちは、自分が持ち得ないものを持つため、具体的にいえば、マズローが解説したような、社会的欲求が満たされないために思い悩むのだ、ということをいいました。

それはステージを上るにつれ、より高次元の近代的存在たりうるものです。マズローもこの文脈に沿った心理学者だったといえると思います。

しかし、これらの確立された市民社会における近代的体系に異議を唱える後発者の思想家たちが現れます。マルクス、ニーチェ、フロイトです。

たとえば後のフランスの構造主義の思想家たちに大きな影響を与えた、クロード・レヴィ=ストロースという社会人類学者、民俗学者がいます。

レヴィ=ストロースは、いわゆる未開発の部族らの中にも「社会」や「文明」があり、それだけにとどまらず、あらゆる動物、生命体にも秩序ある社会性があることを証明しました。つまり近代的に発展していく人間への懐疑です。

19世紀後半以降の思想家たちに通底しているのは、人間中心主義の否定です。

犬はなぜ言語を持たないのか? それはわたしたち人間のような高度な文明社会を持たず、劣っているからではなく、しゃべる必要がないからであり、別のコミュニケーション能力を持っているからです。

これらのことをものすごく簡単なたとえに置き換えましょう。

誰かが算数が得意で満点をとって悦に入っていたとしても、運動会のかけっこでビリになったら辱めに遭います。

わたしたちは研究者ではないので、先人たちの分厚い難解な著書を、眉間に皺を寄せて、多くな時間を浪費して、そのページを捲る必要はありません。ただ、彼らの解き明かしたそれぞれの近代社会における矛盾は、とても有効であり、もし、わたしたちが苦しんでいるのならば、彼らの思想はわたしたちの助力になることは、肝に銘じておくべきです。

彼らがそれぞれの分野で研究していったのは、まさしく社会に生きるわたしたち人間についてのことです。そしてわたしたちが飢えや直接的な暴力からではなく、苦しい、と感じるのは、まさにその社会性がもたらすものです。

では、この社会の中で生きざるを得ないわたしたちが、この病理から脱することができるのか? それが大きなテーマとなります。

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前置きが長くなりましたが、わたしたちがそれぞれ「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」で悩んでいるとしたら、とことん進化していく社会文明の中で生きざるを得ない人間の在り方を追求した彼ら先人たちの思想が役に立ちます。

次回は、「所属と愛の欲求」の悩みの本質と解消法について述べます。

人に愛されたいのだけれども、ならば、どうしたらいいのか? 誰もが思い悩んでいることではないでしょうか?

そう悩み耽るのは、人間の最も原始的な存在の本質だといってもよいのです。所属と愛の欲求が満たされていないと、人は社会的に生きられないからです。

最後まで読んでいただき、まことにありがとうございました。

※ 参考文献

『精神分析入門』上下 フロイト (新潮文庫)

『夢判断』上下 フロイト (新潮文庫)

『悲しき熱帯』1、2 レヴィ=ストロース (中央クラシックス)

『野生の思考』 レヴィ=ストロース (みすず書房)

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