与えることでなぜ儲かるのか? アダム・グラント『ギブ・アンド・テイク』

アダムグラント

pixabay

2014年に刊行された、アダム・グラントの『ギブ・アンド・テイク』という本があります。 ビジネスに興味があるかたは、話題になった著書なので、読まれた方も多いと思います。

なにが語られているかというと、要約するなら、与えるものこそ成功しているという事実、成功する人ほど与えている、という結果なのですが、もちろんここには少し複雑な問題が絡んでいるんですね。

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アダム・グラントが提唱する“ギブ・アンド・テイク”

グラントは、「ギバー」「テイカー」「マッチャー」と、人間のタイプを三つにわけています。「ギバー」とは文字通り与える人。「テイカー」は自分が持っているものより、人のものを奪おうとする人。「マッチャー」は、自分と同等の利益を相手にも求めるもの、というものです。

たとえば、ぼくは「マッチャー」ですね。周囲にもそういう人たちを置くようにして、とにかく強欲なキャッチャータイプは嫌いですし、あるいは、ギバーな人も、なんだか気が合わなくそわそわして、仲良くなれませんね。ボランティア活動などをしている人は、ギバーですね。でも、これが二種類に分かれるわけです。

よく経営では、結局強欲な人間が勝つ、ということがいわれまして、これは事実なのですが、グラントはもう少しこの意見を深堀りし、緻密な経営の実態像に迫っているわけです。

人々は与える、奪う、分ち合う

強欲さは人間のモチヴェーションを著しく膨脹させるには最大の要素ではありますが、それ以上の「高尚な経営者」になると、人に与えることが自分にも多くの施しがあることに気づきはじめます。そもそも一流の経営者になりえたのは、その感情の根源に「ギバー」の精神があったからです。

面白いデータがあるんです。

ぼくが知人の大学の心理学の先生から聞いた話ですが、現在(2017年)の日本では、年収200万世帯の家庭と、年収800万世帯の家庭が、ぱっくり2つに分かれているといいます。そして、それ以上はどうなるか、というと、年収800万も、年収1600万も、それほど生徒たちの振舞に変化は見られない、というわけです。

2倍になれば、幸福度が2倍になってもよさそうな気もするのですが、そうではない。なかなか人間の心理は複雑ですね笑 欲深い人は、年収1000万を2000万にしようとする。しかし、ここで失敗して躓いてしまう人も多い。現在の日本では、よほどの特別なスキルを持っていないと、年収1000万を超えることはできないでしょう。

人はある一定の沸点を超えると、より高次元のステージへと邁進しようとします。有名なマズローの五大欲求があります。生理的欲望、安定の欲望、所属の欲望、承認欲求の欲望、そして自己実現の欲望です。与えるということは、ビジネスにとってなんであるかを、もう少し考えてみましょう。

与えることは高次元であると同時に、原初的な人間の欲望行為である

ファッション通信サイトであるZOZOTOWNの前澤友作代表取締役社長が、現代アートのコレクターであることは有名です。バスキアの絵画を高価格で落札したことは、トピックスになりましたね。資産としてではなく、部屋にインテリアとして飾られた数々の自らが選ばれ作品たちは、とても前澤さんの人柄を表しているようで、そのライフスタイルを写真で拝見したときに、とても素敵だな、とぼくも思いました。きっと部下たちも、彼のもとで働いていることに誇りを持っているだろう、と思いました。

或いは、こんな話もあります。

小説家の村上春樹氏が、とあるアメリカの出版社を訪ねたとき、英語版の谷崎潤一郎の『細雪』が何冊も置いてありました。思わず「それはどうしてですか?」と聞いたとき、ほら、そうきたか、といわんばかりに、「そう質問させるためだよ」とにっこり笑って、社長はこう話されたことが、村上氏のエッセイに書かれています。

「何冊も谷崎の本がある、不思議だと思うから、社長室に来たものはたいていそのことを訊ねる、するとこれはぼくの好きな本だからね、とこたえることができる」そうして彼は著作を一冊村上氏にプレゼントするのです。「こうすることで君にこの本をあげる口実もできあがるわけだ」と。

実はここでその出版社の社長は、ビジネスをしているわけです。あっさりと人間関係が構築されています。これはひとつの例ですが、ここに表れていることこそが、グラントのいう「ギブの精神」ですね。

アメリカは裕福になると、現代アートのコレクターになる方が非常に多いです。しかし、ただの資産目的と、本当の価値を知っているものとのあいだには、大きな隔たりがあります。社長は多くの部下を抱える「人格者」でなければならない。これからの日本の社長もそうなっていかざるを得ないでしょう。まだまだ「強欲」というイメージが根強いものがあります。

与えることは決してボランティアではない

グラントのこの本にはいろんな事例が書いてあるのですが、結局は成功した人たちは、皆ギバーであった、という、そういう感じですね笑 重要なのは、与えるだけでも、人は成功することはできなくて、いかにテイカーから身を守っていくか、という本でもあります。

人に与えてばかりいて、損ばかりしている人がいます。ビジネスにおいては、「対価」を払う、ということは喜びなのであって、そもそもこの本質が日本にはまだ国民的感情論において根付いてはいないのじゃないかな、とぼくは思います。

ネット上においては、ありがとう、という言葉も少ないですね。「いいね」社会には、もううんざりです。お金を使うということは喜びであり、そのサービスや商品を作る、売る、ということは、与えることなんです。グラントがいっていることは、実は真新しいことでもなく、基本的なビジネスについてです。

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