マクドナルドはなぜ成功したのか? 『成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう』 マイケル・E・ガーバー (原田喜浩訳 世界文化社) part1

マイケルEガーバー

初版は1986年。改訳新版では、サラというパイ屋さんを経営する人物が登場し、著者との会話の中で、起業とはなにかを学んでいく過程が順序立てて語られています。起業家を目指すすべての人が目を通すべき本です。CEOを対象にしたアメリカのアンケートでも『7つの習慣』『ビジョナリー・カンパニー』という名著を抑えて、ビジネス書の1位に輝いています。

本書に紹介されていることは、スモールビジネスがいかに失敗し、原因はどこにあり、そこから脱却するにはどうしたらよいか、についてです。これを聞いて、ああ、と思わない方は、起業は無理なので、やめたほうが賢明です。是非一読をお勧めします。

全体は、7つのパートにわけられています。前半は経営の失敗の原因と成功へのカギ、後半は具体的な成功への7つのステップについて書かれています。2回にわけて記事をupしたいと思います。

ガーバーはスモールビジネスを成功するために、こう最初にいっています。

1 大半の起業家が失敗に終わる理由を知る

2 成功率の高いフランチャイズビジネスから学ぶ

3 一流企業のように経営する

4 毎日の仕事で実践する

起業家の失敗原因として、重要なことが最初に書かれてあります。

致命的な仮定とは……「事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は十分に備わっている」ということである。

これは以前ぼくが勤めていた会社の社長がまさしくこのタイプで、会社は7年持ちませんでした。

パイを焼く若い女性を見てごらん。

彼女は焼きたてのパイを売るお店を始めたよ。

若かったのに、あっというまにおばあさんになってしまったよ。

こうならないために、この著作になにが書かれてあるか、いっしょに読んでいきましょう。

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企業は成熟していく

まずガーバーは、ビジネスにとって「職人」「起業家」「マネージャー」の3つの人格が必要だと説いています。パイ屋をやろうとするサラは、職人の技術しか持っていなく、他の2つの視点が欠如しています。それぞれの性格はこうです。

起業家 変化を好む理想主義者

マネージャー 管理が得意な現実主義者

職人 手に職を持った個人主義者

さらに事業とは、必ず幼年期、青年期、成熟期と成長過程を経る、ということも述べられています。

事業における青年期は、人手が必要だと感じたときからはじまります。職人から出発した起業家はここで人を雇う必要性に迫られ、まず第一の壁にぶつかります。すべてひとりでやってしまおうとすると、へとへとになってしまう。この著書に登場するサラがそうです。自分は美味しいパイをお客さんに提供することをやりたかっただけなのに、と思う気持ちが、さらに彼女を追いたてる。

やがて中には事業を縮小して、幼年期へ戻る企業もある。ガーバーはこれに警鐘を鳴らします。それは廃業への道へ向かうことにほかならないからです。ここを脱するためには、やはり人を雇わなければならない。そのときガーバーは的確なアドバイスを、サラに送っています。

本当の信頼関係は「お互いをよく知ること」で築かれる。注意すべきなのは、「知ること」と「盲目的に信頼すること」は別問題だということだ。「知る」ためには、「理解」しなければならないし、「理解」するためには、相手の人柄や行動パターン、もっている知識や興味の範囲を知らなければならない。

人はなぜ相手を知ろうとせず、あるいは、盲目的に信頼してしまおうとするのか?

これはほかの人間関係や生活における失敗ケースと共通するものがあるので、的確に書きます。理由は簡単です。面倒だから、です。人は面倒なことが嫌いなのです。人は習性的に楽な選択を選ぶ感性があります。しかし、生きていく、ということは、人間関係を構築していくことであり、それは面倒なことを引き受けていくということです。企業もまったく同じです。

事業の規模をあらかじめ知っておくべき心構えについても書いてあります。

多くの経営者は、金を稼ぐ具体的なノウハウばかり追い求めますが、これも要するに、面倒ごとが嫌いだから起こる滑稽な事例です。知識や経験や熱意が根底にないとビジネスは成功しません。そうしていると、変化が迫ったときに足踏みをせずに済むのです。企業するとき、コンサル頼みにして、自分自身に知識の蓄えをすることをおろそかにしてはいないでしょうか? ガーバーはさらにこういいます。起業するとはなにか? 腑に落ちてきたかもしれません。

私からすれば、普通の会社は運任せに経営されているように見えるけれど、成熟期に入った会社は長期的ビジョンをもっていて、それを中心に経営されている。長期的ビジョンをもっていることこそが、起業家的な経営の方法なんだ。会社がつくられたころから、この考え方で経営されてきたから、成長を続けることができるのさ。

成熟期における企業体質

ガーバーは職人と起業家との違いを端的にこう述べています。

起業家は「事業が成功するにはどうするべきか?」を考え、職人は「何の仕事をするべきか?」を考えている。

起業家にとって、会社とは顧客に価値を提供する場所である。その結果、利益がもたらされる。職人にとって、会社とは自己満足のために好きな仕事をする場所である。その結果として、収入がもたらされる。

起業家は、最初に会社の将来像を確立したうえで、それに近づくために、現状を変えようとする。一方で職人は、不確実な将来に不安を抱きながらも、現状が維持されることをただ願うばかりである。

起業家は、まず事業の全体像を考えてから、それを構成する部品を考える。しかし、職人は、事業を構成する部品を考えることから始まり、最後に全体像がつくられる。

起業家は全体を見渡すような視点をもっているが、職人の視点は細部にこだわりがちである。

起業家は自分の描く将来像から逆算して現在の自分の姿を決めるが、職人は現在の自分を基準に将来の自分の姿を決めてしまう。

アメリカにベンチャーから世界企業へと成熟したIBMというIT企業があります。その例を持ちだして、最初に会社を立ち上げたときに夢やビジョンを持っていて、事業が成功した将来、会社がどのような姿になっているかを明確に想像していた、ということが語られています。

IBMは思い描いた将来像に近づけるように仕事をしていたといいます。事業を経営していたのではなく、事業を創り出していた、ということです。職人には企業が持つ「ミッション」や「ビジョン」を思い描けません。戦術はあっても、戦略がないのです。これが「起業家」の資質です。

そのためにはどうするか。ガーバーはひとつの解答を与えています。

「顧客は私の事業をどう思っているのだろうか? 私の事業は競争相手と比べて、どれくらい差別化できているのだろうか?」という問題意識を企業家は常に持っている。

このようにして起業家の視点は、まず顧客像を明らかにするところからスタートする。はっきりした顧客像を持たないかぎりは、どんな事業でも成功しないのである。

ぼくがライターをはじめた頃、何故ペルソナが必要なのか、よくわからなかったのですが、今はすごく腑に落ちます。起業家の心構えとして、こうも書かれています。

ペルソナ 企業が提供する製品・サービスにとって象徴的かつひとりに絞られるユーザーモデル

起業家にとっては、顧客はチャンスである。なぜなら、顧客のニーズはたえず変化し続けることを知っているからである。そのために起業家は、顧客が現在や将来に欲しがるものを探し続けなければならない。

そしてガーバーはスモールビジネスのひとつの典型的ビジネスモデルとして、フランチャイズをあげます。

フランチャイズという経営戦略

レイ・クロック (Ray Kroc, 1902年10月5日 – 1984年1月14日)は、世界で最初にフランチャイズ経営を創ったアメリカの企業家です。クロックは、「何を売るか」ではなく、「どのように売るか」に注目しました。つまり、売るための仕組みにこそ価値があると考えたわけです。それが今日のマクドナルドの爆発的な成功の鍵となります。

はじめはたった一店舗であったマクドナルドの兄弟が経営する店でレイ・クロックが発見し理解したことは、ハンバーガーが彼らの商品ではないということでした。マクドナルドという店自体が彼らの商品だったわけです。つまり、事業の本当の商品とは事業そのものなのだ、とこのときこの発想の転換がクロックの中で起こり、「事業のパッケージ化」の原点になりました。

マクドナルドでは、すべてがマニュアル化され、どの店舗に入っても、以前来店したと同じ満足度が味わえます。顧客はハンバーガーを求めに来店するのではなく、マクドナルドに来店するわけです。ガーバーはフランチャイズが成功する理由をいくつか書いていますが、重要な点として、それが誰にでも経営可能、つまり再現性が高い、ということを力説します。マクドナルドの世界展開が可能だった最大のポイントはここです。

さらに重要なメッセージも書かれてあるので引用します。

あなたの人生の目的は、事業という生き物に奉仕することではない。反対に、事業という生き物は、あなたの人生に奉仕するはずである。つまり、自分のためにお金を生み出してくれたり、人生の目標のために役立ってくれたりするような事業をつくらなければならい。

ガーバーはなにもフランチャイズ経営をしろ、と強引にいっているわけではないわけです。ただ、人ではなく、システムに依存したビジネスをしましょうといっています。専門家依存ではなく、システム依存型のビジネスが成功の秘訣だ、と説いているわけです。

偉大な事業とは、非凡な人々によってつくられたものではない。平凡な人が非凡な結果を出すからこそ、偉大なのである。

この言葉も響きます。その役割を果たすのが、システムなんです。専門性の高い職人依存をやめ、誰にでも再現性の高いシステムを構築することが、企業への心構えです。

ガーバーはなぜこの経営システムががよいかということについては、心理学的な見地から回答を与えているので、ここも注目点です。多数の人は秩序を求めているのだ、という集団心理です。「とりあえずマック行っとけば」という感覚って、皆さんないでしょうか? 職人である自分と企業とをまず分けて考えてみること。次に実践してみること。事業の試作モデルを考えずにいくらがんばっても、経営は上手くいきません。

最後に、この著書の前半部分で、ガーバーが書いているここをおさらいしておきます。

他の人に任せてもうまくいくような事業をつくろう。

どこでも誰でも、同じ結果が出せるような事業の試作モデルをつくるところから始めよう。

事業とは、あなたとは別の独立した存在だ。それはあなたの努力の成果であり、特定顧客のニーズを満たす機会であり、あなたの人生をより豊かにする手段である。

事業とは、多くの部品から構成されたシステムであり、ライバルとは明確に差別化されたものであり、顧客の問題を解決するものである。

どうすれば他の人に任せても、事業が成長するだろうか?

どうすれば自分が現場にいなくても、従業員は働いてくれるだろうか?

どうすれば事業をシステム化できるだろうか? システム化された事業では、五千カ所に店を出すとしても、一カ所目と同じことを繰り返すだけで、スムーズに出店できるはずである。

どうすれば自分の時間を確保しながら、事業を経営できるだろうか。

どうすればやらなければならない仕事に追われることなく、やりたい仕事に時間をあてることができるだろうか?

職人的心構えを脱ぎ捨て、起業家へと変貌するために。ぼくたちがやらなければならないことは、ガーバーが書く次の7つのステップです。

次回は成功するためのその「7つのステップ」という具体的な内容について踏み込みんでいきます。

後半はこちらにあります。

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